コートのクリーニングと丈出しを依頼したら、ボロボロになった所がでてきた。虫害ではないか。

更新日:2020年12月8日

クリーニング

平成16年度

相談内容

丈出しを依頼した際には、受付と仕立屋と三人で確認した。預ける前から穴があったら、その際に分かったはず。5~6年前に購入して、4~5回着用したくらい。(組成 絹100%) 洗い張りの後、丈出し。仕立ての人は仕立て直す時に初めて気が付いた。が、そのまま丈出しをしている。でこぼこした生地なので、擦れてできた穴だと言われたが納得できない。

テスト結果

テストの結果

全体にわたって各所に破れたような破断が認められました。また、生地の変色も全体に見られました。
マイクロスコープ等で検鏡すると、糸が切れていることが確認できました。特にたて糸が切れており、その中でも着色糸が多く認められました。(写真1)
走査電子顕微鏡(愛知県県民生活プラザ商品テストグループ協力)で検鏡すると、糸が切れた先端の断面図は虫害による特徴は認められず、劣化によると推定される破断が認められました。(写真2)また、破断面には破断だけでなく裂けたもの(写真3)や破断した糸の途中にささくれが認められるもの(写真4)もありました。表面の生地の内側にある袷の生地を同様に検鏡すると、ささくれや裂けなどの劣化は認められませんでした。(写真5、写真6)
以上のことから、虫害によるものではなく、糸の劣化も預けている間(3ヶ月)に出た影響ではなく、むしろ長期間の保管中に、湿度やガス、あるいは、隣接した衣類の影響を受けて、劣化が起こり、丈出しなどの作業により顕在化したものと推定されました。
(写真1)
たて糸はきれている。よこ糸は切れていない。
(マイクロスコープ)
(写真2)
切れた糸の繊維の破断面。
(走査電子顕微鏡)
(写真3)
繊維に裂けたところがある。
(走査電子顕微鏡)
(写真4)
繊維に見られるささくれ。
(走査電子顕微鏡)
(写真5)
相談品の内側の生地の繊維。
破断、裂け、ささくれはない。
(走査電子顕微鏡)
(写真6)
内側の生地。たて糸、よこ糸とも切れていない。
(マイクロスコープ)

 

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